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二両編成の車内は五割程度の乗車率で、私は海の見える席に座る。
革のジャンパーを着た男性が乗ってくる。たくさんの座席が空いているにも関わらず私の隣に座っても、とくに気に留めなかった。この電車ではいつもほとんどの人が、海を背にする席には座らないのだから。私は学生鞄が膝からはみ出さないよう身に寄せる。
空は過ぎていく夏を惜しむように、中途半端な積乱雲を作っている。私は光る海面を眺めている。
唐突に、電車が停止する。
停まっているはずの車内が、ゆらりゆらりと揺れている。大きく横にしなるように。立ち上がろうとした乗客がその場に座りこんでしまう。鞄が膝から落ちる。車体はビシビシと金属音を立て、つり革は狂ったように揺れている。そうしてどのくらいの時間が経過したのか、緩やかに揺れは止まる。
運転士が客席にやってきて非常扉を開けようと試みている。車体が歪んでしまったのか、それはうまく開かない。皆が行儀よくなりゆきを見守っていた。乗客の一人が顔を上げる。
窓枠に縁取られて、まるで映画のように見える大きな津波。
私にはそれが、とてもゆっくりと動いているように見えた。海が粘度と意思を持ち向かってくる。
「窓を割れ!」
だれかが叫ぶ。
スーツを着た男性が海と反対側の窓に鞄を叩きつける。窓はびくともしない。若い女性がショルダーバッグからステンレスボトルを取り出し投げつける。窓ガラスにひびが入る。
一人だけ海側の窓を見つめている人がいた。さっきまで私の隣に座っていた、革ジャンの男の人。海に向かって手を伸ばしている。
『と ま れ』
彼の口がそう動いたのが分かる。阻むように手のひらを窓に向けている。
津波が迫ってくる。
目が覚めると電車は走っていた。
「……津波は?」
私は彼の肩にもたれかかっている。身体と意識が重く沈んでしまいそうになる。
「覚えてるの」
彼は目を閉じたまま、寝言のようにつぶやく。
「大規模な無効化を使うといつもは気を失うのに、まだ余力がある」
窓ガラスのひびは消えていた。彼が自分の手のひらを見つめる。なにかを尋ねようとしてもひたすらに眠くて声が出ない。
「君も、能力者なのか」
小さな声で彼が私に尋ねる。私の右側に接している革の質感が心地よく、身体を起こすことができない。
「俺の、そばにいて……」
耳元で囁く彼の声は、消えていくようだった。私は静かに輝いている海を確認して、再び目を閉じた。
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ってゆう夢を見たんですけど。
あまりのリアリティに書かずにはいられなかったんですけど。
どうなんですかねこれ。
革ジャンの人は仮面ライダーウィザードの中の人に似てました。
だからどうした。